40-目の前に広がる非日常の景色。自分には縁遠いものでいい

20人ほどが建物の中に入り、残りの10人は出入り口辺りで待機ということだ。俺は20人側と一緒に行くことになる。
20人で58人の能力者を制圧できるのか?という疑問が生じたけれど、そこは何とかできるのだろう。

屋内なので、戦闘するのに、20人が突入するには狭いんじゃないかと思ったが、広めの通路で、通るくらいなら、20人は余裕がありそうだった。

建物に近づくにつれ、能力の匂いを感じ始めていたが、建物の中に入ると、それはもっと強烈になった。
しかも複数ある。数は……わからない。5人か10人か。20人以上がいる感じではないかったが、能力を使っているのが少なくともそれだけいる。

何でこんな時に能力なんて使ってるんだ?と思いながらも、歩みを進める。

見張りの者がいて、会場に入る前にも一悶着あるかと思いきや、するすると進んでいた。
警備がザルか?
と思ったが、どうやら能力を使って大人しくさせていたようだった。
認識阻害、意識操作、拘束などと、数人の能力を組み合わせて対処していたらしい。
なるほど。こういうことができるから、人数が少なめなのかもしれない。
そして俺が感じていた能力使用者の内、数人はこちら側だということがわかった。

「ここだ」

と会が催されている場所らしき場所に着いた。

なぜ、この部隊の人たちがここまで細かく知っているのかは、事前に調べ上げていたからだろう。
さっきから聞こえていた音は、ここから鳴らされているように聞こえた。それに相手側の能力であろう匂いも近くなっている。防音の扉の向こうがかなりうるさいことになっているように思える。

部隊長がアイコンタクトを送っている。

その後、扉を開けた。

中には大勢の裸体の男女がいた。服装ははだけていたり、下半身だけ脱いでいたりと様々だった。それは予想通りだったのだが、聞いていた60人ほどよりはかなり多い気がした。
そして女性もいた。
ざっと女性だけでも30人以上はいるような気がした。男性はその倍以上いるように思えた。
人間の把握能力的にある一定の数を超えたらそれ以上はわからなくなる、ということがあるので、実際にはもっと多いかもしれないし、少ないかもしれない。
俺の感覚通りなら、今現在、この場にいる裸の人間は100人ほどいることになるのか。完全にアウトだ。

部隊の人がこの場をどう制圧するのか気になったが、そんなことより、この中から古今泉百々華を見つける必要があった。

あまり見たくない光景が広がっているので、探すのは大変だけれども。

会場の参加者たちが動揺している間に隊員たちがどんどん制圧することになる。
隊員たちは能力を使用している。相手側の中には抵抗する者もいたようで、相手側からも能力の使用を感じた。しかし、こちらは相手側が能力を使おうが、そんなの関係ないらしい。部隊の人はどんどん突入して、抵抗する半裸の男女を無力化していく。
それを尻目に辺りを見渡す俺。

人数も人数なので、こちらの包囲から漏れて逃げていく人もいた。
入り口でもう10人待機しているので、そちらに確保されるだろうが。
そう納得していたが、逃げていく中に古今泉の姉がいると困る。

悲鳴や怒声が上がる室内にて、俺は必死に人を探さなければならなかった。

視界には無力化されなかった裸VS武装の能力者対決が写っている。
臭いも入り乱れて視覚的にも俺の嗅覚的にも大変なことになっていた。

視界にも入れたくなかったが、そうも言ってられない。そんなことに気を取られている余裕はない。
戦いの邪魔にもなるし、さっさとここから立ち去りたかった。

探していると、はだけた下着をつけているだけの服装をした古今泉百々華を見つけた。
離れていても、シルエットは美しい。
他にもスタイルがいい女性はいたと思うが、目に入ったらアレが姉だとわかってしまった。
姉も茫然としているのか、多くの人がしているのと同じようにその場から動かない。

彼女に向かって走る。

古今泉百々華の前に立ち、声をかける。
「古今泉百々華か」
「ん、君、誰?」
当然の疑問だった。古今泉未来の名前を出しておけば信頼は得られるか?この状況では何を言っても無駄かもしれないが。
「俺は古今泉未来の知り合いだ。ここは見ての通り危ないから外に出る」
俺はもらった紙袋を古今泉百々華に渡す。
「何これ?」
「服らしい。走りながら着て下さい」
と言って、古今泉百々華の腕を取り立ち上がらせる。
古今泉百々華は紙袋を開け、中をのぞいている。
「危ないから早く」
「無茶言わないで」
相手は裸だった。靴くらい履いていて欲しかったが、靴も履いていなかった。

「靴は?」
古今泉百々華に聞くと、「あそこ」と指を差した場所に無造作に脱ぎ捨ててある靴が何足かあった。
端っこに追いやられてる。

面倒ではあるが、後々のこと考えたら靴はあった方がいい。

「靴は履こう」
古今泉百々華は靴が無造作に転がっているところから黙って自分の靴を取り、履いた。
底が厚いサンダルか。走りにくいものだが我慢してもらう。誰かのスニーカーを借りても良さそうだったけど、サイズの問題もあるだろうし、他にも色々問題がありそうなので、口に出さない。

靴を履きながら、周りで乱闘騒ぎになっている中、古今泉百々華は俺に質問を投げかけた。
「今何が起きてるの?」
ほぼ全裸の格好で靴を履いてスッと立ち上がり、あまりにも平然と聞いてくるので、「これから靴を履いて家から出るのだけど?」と責められた気分になった。服を着ないことが普通なのかもしれないと一瞬思うほどだったが、目の前にいる女性はほぼ全裸でも、俺は服を着ていた。俺が正常のはずだ。

先ほどまでほうけて動いていなかった時とは違い、立ち上がった姿はあまりにも堂々としていた。胆力が凄い。これが古今泉百々華か。

「とにかく今はここから出ましょう」

俺が先に進み、古今泉百々華はその後をついてくる。
横ではまだ決着はつかないようだ。
集まった能力者の中にも猛者がいたのかもしれない。
こっちに向かってきそうな輩がいないかだけは確認しながら、外に出た。

とりあえず会場の外には何の問題もなく出れた。ドアを閉めたら急に聞こえていた音が小さくなり少し落ち着く。
俺の仕事としては、古今泉百々華をちゃんと送り届けることなので、まだ安心はできないが。
逃げ出した奴らと鉢合わせする可能性もある。

建物内の廊下では戦いは起きてなかった。
出入り口の方はどうなのだろうか?

俺が止まって様子を窺ったが、入り口で待機していた10人ほどがいるだけだった。逃げ出した数人も捕らえられていた。逃げ出した全員かはわからない。

「どうしたの?」
俺が止まって様子を見ていたので、それを疑問に思ったのか、百々華がひそひそ声でささやく。
少しびっくりしたが
「何でもない。行ける」
と俺は答えた。
「あの人たちは?」
百々華は出入り口にいる部隊の人たちのことを聞いた。
「あの人たちは味方だから、大丈夫」
捕らえられている人たちのことは無視して答えた。
俺は前に出た。

出入り口の隊員が俺の人影を確認すると銃を構えられたが、俺だと分かると降ろした。

「君か」
「はい。古今泉百々華を連れて今から出ます」
「お疲れ様」
簡単な挨拶を済まし、外に出ようとして百々華の確認のため後ろを見る。
古今泉百々華は既に服を着ていた。
いつの間に服を着たんだ?
まぁ、いい。

俺たちは中でまだ戦っているであろう隊員と参加者を後に建物から抜け出した。

コメント

タイトルとURLをコピーしました