28-何かわからないけど、気持ちがはやってる

師匠に報告をする。ゴールデンウィークが明けてからの初めての学校だったが、特に変わりなく……なんてことはないか。
事件は起こってないけれど、能力者が関係するかもしれないことについて、頼まれた、と。そう報告することにする。そうすれば不自然さが消えるかもしれない。

「今日は、特に事件はありませんでしたが、相談を受けました」

「相談?」
「はい。姉の動向がおかしいので、一緒に調べてほしい、と」
「もっとわかりやすく」
「えっと……」
「いや、誰から相談されたのか?とか、何でお前に相談されたのか?とか全くわからん」
「すみません」
「いや、謝るとかではなくてだな」
「はい、すみません。えっと、誰から相談されたのかについては、女子生徒です。隣のクラスで、古今泉未来といいます」
師匠からの反応を一瞬待つが、何もない。これはまだ続けろというサインだ。師匠は俺と会話するときは相槌を打たないことが多い。
「何で俺に相談したのかというと、轟剛力と俺が戦ったから、ということでした。えっと、なぜ轟剛力と戦ったら頼まれることになるのか、というと、お姉さんの動向がおかしくなっている原因に、喧嘩が得意そうな奴らが関わっているかもしれない、ということらしいです。詳しくはわからないですが」

「喧嘩が得意そうな奴ら……」
師匠はそう言うと少し考える間を取った。俺はそれから発言が続くのを黙って待っていた。が、師匠からの反応がないので、こちらから続ける。
「不良、みたいな。ヤ○ザ、ではなく、もう少し若い人とも言ってたような気がします」
「それで、俺に力を貸してほしいということで、声をかけられました」
「なるほど」
「それで助けてほしいということだったので、手伝うことにしました」
「うん?」
「お姉さんの動向というのが、最近夜に出かけて帰って来ない、というものでした。お姉さんは、去年生徒会長をしていて、成績がよく、とてもそんな風な行動に出るとは思えない、ということらしく。今までよかった姉妹仲も、最近ではあまり話してくれなくなったらしいです。もしかしたら、これはその喧嘩が得意そうな連中の中に能力者がいて、何らかの能力が働いているのかもと予想しています。能力者がいなかったら、杞憂に終わるのですが。むしろ杞憂に終わることを祈っています」
「……そうか。わかった」
師匠は少し間をおいて俺の言ったことを了承した。
どうやら伝わったようだ。

「お前に先に報告しておく。どうやら学校の外部を調べるようだから」
「はい。何でしょうか」
師匠の方から話題を振ってきた。珍しい。報告の際は俺が話を振ることが多いのに。
「そっちの方に、今度潰そうとしている集まりがある。もし、お前が調べようとしている連中が、その件と関わりがあるようなら、こちらの指示に従って動くように」
「は、はい」

予想外の話だった。
まさか組織の話になるとは。

「だから、お前が調べた連中のことは私に伝えてくれ。私が確認する。行動を起こすのはその後だ」
「わかりました」

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