同じクラスの凪元源蔵。
見た目の割に、ゴツい名前でインパクトある。
みんな名前だけは覚えているはずだ。
しかし、インパクトがあるのは名前だけで、いまいち影が薄いやつだったはずだ。詳しくはあまり知らない。
小柄で、前髪で目が隠れがちで、邪魔になりそうだな、と思った覚えがある。
こいつが能力を使って倒れたのか?
疑問は浮かんでくるが、肩の辺りを手をかけながら声をかける。
「おい、凪元。大丈夫か?」
「うーん……」
唸っているだけだ。意識はない。
こういう時はどうするのがいいんだったか?
とりあえず先の予定通り、身体を起こして保健室に連れて行くか。
凪元は、かなり小柄なので、簡単に持ち上げることができた。地べたにうつ伏せだったので、制服がちょっと汚れていた。背負うつもりだったので、前を軽く払った。
これなら俺1人で運んでも大丈夫そうだな。
身体をおぶってみたが、それでも意識を取り戻す様子はない。
しかし、気絶までしてるとは。何が起きたのか?
保健室には、なんて言うんだったか、養護教務だったか?保健室の先生がいた。白衣をまとっていたから多分そうだ。ポニーテールの若い女性の方だ。
所作に優雅さを感じられる。洗練されているような。
「失礼します」
「はーい。あれ?どうしたの?」
「倒れてたので運んできました」
「ええっ?大丈夫?」
慌てた様子で、こちらの方に向かってくる。
立ったままなのもなんだと思ったので、ベッドを使ってもいいかどうか、尋ねてみる。
「ベッドで寝かせてもいいですか?」
「あ、はい。そうだね。先に寝かせようか」
養護教務の人は、さっとベッドを整えてくれた。
俺はそこに寝かせてた。
「大変だったでしょ?ありがとうね」
「いえ、大丈夫です」
「何があったの?」
当然、その話になる。俺も詳しくは知らないんだけど…。どう答えたものか。
「校舎裏で倒れてまして」
「えー、どんな風に?」
「うつ伏せに」
相手の方も困惑するだろうな、と思ったけれど、それ以外に答えようがなかった。
「うつ伏せか。頭は打ってなかった?」
「俺が見たときには倒れてたので、何とも」
「うーん。頭打ってなかったらいいんだけど。
このまま起きなかったら救急車で病院で見てもらった方がいいかもね」
「そうですね」
「この子の名前わかる?」
「凪元源蔵だと思います。同じクラスの」
「凪元くんね……」
何かに書き込んでいた。
記録をとらないといけないのかもしれない。
「君の名前は?」
「木々村良平です」
「ありがとうね、木々村くん」
俺たちがそうやってやり取りを続けていると、うめき声が聞こえてきた。
ベッドの方から聞こえた。凪元が起きたのだろうか?
「あれ?えっと、ここは?」
上体を起き上がらせようとしていた。
「保健室だ。凪元大丈夫か?」
「うん。多分……。何があったの?木々村くん?」
俺の顔は認識されているようだ。誰?という疑問の声も上がらなかった。
「お前が校舎裏で倒れてたから、保健室に運んだんだ。」
「凪元くん?大丈夫?何があったか教えてくれる?」
俺たちの要領を得ない会話が繰り広げられてるのを見かねてか、養護教務の人が凪元に尋ねた。
「何が起きたんでしょうか?覚えてないです」
「そっか。頭とか痛くない?」
「頭ですか?……うーん、痛くないですね」
凪元は、何でもないかのように答える。
「そっか。なら少し安心かな。頭打ってたりしたら危ないなって思って」
これを言ったのは用務員の先生だ。
ん?用務員の先生?
保健室の先生だ。
「今は大丈夫でも、気絶してたんだし、頭とか打ってたら大変だから。念のため病院で診てもらった方がいいかもね」
「あー……そうですね。その方がいいかもしれないです。早退して病院行こうかな」
「そうする?じゃあ、私の方から担任の先生に伝えておこうか?」
「お願いしてもいいですか?」
「うん」
2人は早退の準備を始めた。
俺は何もすることはなかったが、何となくここにいた。
そうして、2人のやりとりを眺めていると、チャイムがなった。昼休み終了のチャイムで、授業開始の予鈴か。
ここまでだな、と思い、俺はこの場から去ることにした。
「俺は教室に戻ります」
「あ、そうだね。木々村くん、ありがとう」
保健室の先生が言う。
「いえ、大丈夫です。」
「木々村くん、ありがとう」
これは凪元の言葉。
先ほどまで気絶していたにしては、しっかりしているなと感じた。
「大丈夫だ。凪元も気をつけてな」
「うん。ありがとう」
じゃ、失礼します、と言って俺は保健室を出て教室に向かった。
授業を受けてる最中に凪元が教室に入り、自分の荷物をまとめて学校を早退していった。
結局凪元に関しては何もわからなかった。明日詳しく話を聞くか。
授業が終わったら、爆発があったところについて調べてみることにしよう。
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