凪元が適当な話を俺に振ってきているのには、実は理由があった。
「木々村くん、クラスのみんなとあまり話さないねぇ」
「ん、急にどうした?」
「え?いやさ。僕がせっかくクラスのみんなに木々村くんは怖くないってことを知ってもらおうとしてるのに、木々村くん、全く乗ってこないとおもってさ」
「そんなことしてたのか」
「そんなことしてたって……えぇ!本気で言ってるの?マジぃ?僕の意図に気付いてなかったの???せっかく色々と話振ってたのにぃ???」
「どういうことだ?」
「だって木々村くん、普通の学校生活を送ってるように見せないといけないんじゃないの?」
普通の学校生活を送ってるように見せないといけない?
どういうことだ?
「言葉の意図がわからない。どういうことだ?」
「木々村くん、自分がめちゃくちゃ浮いてるの気付いてないの?怖がられてるのか……って落ち込んでたじゃん!!」
「轟剛力先輩の件の前からみんな、木々村くんが普通じゃないこと自体は気付いてたから、今こんなにもみんなに只者じゃないって言って怖がられてるんだよ!!」
「だから僕がみんなとの話せるように色々な話を振っていたのに、木々村くんは……」
「それは……気づかなくて悪かった」
「まぁ、いいけどね。木々村くん周り見てないよね、あまり。自分の興味あることには集中できるけど、自分の興味ないことには全く注意払わないタイプだよね」
「木々村くんの学校生活の助けになるかなって思ってやっていたことは、全部ありがた迷惑のお節介だったってことか……。みんなと仲良くなることは情報も得やすくなって仕事にも役立つと思うんだけどね」
「……」
言われたい放題だったが、俺は何も言い返せなかった。
確かに、と納得する部分があった。
「木々村くん、情報集める時めっちゃ聞き込みするよね。この前だって他のクラスの人にめっちゃ聞き込みしてたみたいじゃん」
「……そうだな。確かに。あいつらの名前を知るために聞いたな」
「あれ、奇行として、有名になっちゃってるから。木々村くんに名前聞かれたら殺されるぞって言われてるからね」
「マジか」
流石にそこまでは想定していなかった。
「そう、流石にまずいでしょ。だからみんなに木々村くんは怖くないってことを知ってもらわないとって思ってたんだけど」
「うーん。確かにな。流石にそれはまずいかも知れない」
俺は気付いていなかったが、本当に相当恐れられているらしい。あまりに恐れられていると、これからの活動に支障が出るかもしれない。
しかし、実際に危害が加えられてなくても、噂だけで恐ろしいと思われてしまうのか。
なるほど。
噂を鵜呑みにするな。自分での検証は踏むべきだ。不確定の情報に踊らされるな。
師匠からいつも言われていた。
しかし、他の人にとってはそうではなく、恐ろしい噂が流れていたら、それに対して警戒してしまうというのが、普通なのかもしれない。
火のないところに煙は立たぬというしな。いつかそういう風になってしまうかもしれない。
コメント